共学驚愕学園(作画)


 そのようないきさつがあって、この作品に関して私は美術スタッフと撮影監督という役割で参加する予定でした。美術スタッフは10人位でしたので、Aパート(前半、というかシーン1)で1人当たり7〜8枚、Bパート(シーン2〜8)も含めて20〜30枚位の背景を描けばよいという感じで、作画の方は美術スタッフについては原則1カットのみという方針でした。
 作画の方が追いつかず、仕上がる目途の無いカットを回収するようになって、徐々に私の方に回ってくるようになったのは9月頃だと思います。動画まで済んで、あとはセルの用意、トレス、彩色で済むカット、作画監督の原画はあるカット、演出によるレイアウトのみのカットと、それはもうさまざまでした。

 作画で私の関与したカットは以下のとおりです。
01 S01-C01/主人公が坂を上ってくるカット/原画、動画、仕上げ(歩きリピート、セル引き:S04とS07の同ポジも同様)
02 S01-C19/猫の間抜けさにあきれるA子「はぁー、おまけにさぁー不器用ときたもんだ。いー加減に帽子渡しな!」/A子の動画割り
03 S01-C56/パンダが昔もてた頃の写真のカット/写真ハイライト部分の原画
04 S02-C01/自動販売機の取り出し口に牛乳瓶が落ちるカット/取り出し口カバーのハイライト
05 S02-C15/主人公が校庭を見渡してる引きのカット/主人公(止め)の原画修正
06 S02-C20/屋上でA地区の爆発が起き、A地区にPANするカット/主人公(止め)の原画修正
07 S02-C22/A地区から主人公にPAN−DOWNするカット/主人公(後ろ姿:止め)の原画修正、トレス、仕上げ
08 S04-C01/S01-C01と同ポジ/セーターのセル追加
09 S04-C07/A子「ま、こ〜れを見て!」と帽子を取るカット/動画割り
10 S04-C14/A子「なのにさぁ〜、こいつがっっ!!!」と象を指さすカット/A子の手の原画
11 S04-C21/A子「ま、いーけどさっ! そーいやアンタ、、、」/動画割り、仕上げ
12 S04-C23/飛行機雲/背景も含めて全部
13 S04-C24/主人公とA子の足元「やばっっあたし週番なんだ。先行くねー」/原画修正
14 S05-C21/男の子の顔面に豚の投げた手袋がぶつかるカット/手袋の原画
15 S05-C24/先生のチョークが折れるカット/背景も含めて全部
16 S05-C26/先生の咆哮でガラス窓が割れるカット/ガラス部分全て
17 S06-C01/文化祭ライブステージのスピーカー/スピーカー全部(仕上げは数人で塗ってたため、色パカに気づいたのはフィルムになってから)
18 S06-C09/A子と主人公が演奏しているカット/動画割り
19 S06-C11/主人公が演奏していて、聴衆の視線に気づくカット/動画割り
20 S06-C15/同ポジの振り向くカット/動画割り
21 S07-C01/屋上に座る主人公のロング/原画修正
22 S07-C04/主人公があくびをして寝ころがるカット/原画、動画、仕上げ
23 S07-C06/B子の声がして主人公が起き上がるカット/動画割り
24 S07-C09/B子「えへっ、帰ってきちゃった!」/動画(口パク、目パチ)、仕上げ
25 S07-C10/B子の尻尾が動くカット/原画修正
26 S07-C11/B子の変貌に唖然とする主人公/原画、動画(目パチ)、仕上げ
27 S07-C14/B子「あなたは何を受け容れたの?」/原画修正
28 S07-C17/主人公のアップ/動画(髪の毛)、仕上げ
29 S08-C01/S01-C01と同ポジ/冬コート
30 S08-C18/主人公が取り出した鏡のカット/鏡のハイライトと透過光の指示

 最初の頃に引き受けたカットは、半露出の影を付けたり、動画をフルにしたりと随分手をかけていたのですが、最後の頃(主にS6の学園祭での演奏シーン)になると、とにかく最低限、動いているように見えるだけの動画割りというカットがあります。(原画が2枚で、動画は中割りの2枚) それに、自分で仕上げるカットはラフな動画のままトレスしたりしましたが、他の人に仕上げを頼まざるをえない状況のため、自分だけが分かるような動画ではさすがにまずいので、最後に動画を清書する手間がかかるわけですね。これが私には苦痛で、、、 作画監督のW田氏の線はすごく安定していて、それと正反対の自分の絵はつくづくアニメ向きではないのかなと思いました。

 トレスですが、実は私、会員必須のロットリングを持ってなかったかもしれません。いや、あったかもしれないのですが、使える状態になかったか、とにかく、実際には丸ペンとロットリングインクで裏トレスしてました。丸ペンだとセルが切れてしまうという噂もありましたが、筆圧の強い私でもそこまではならなかったので、デマなんでしょうかね。何年か後の後輩はカブラペンでやったとかも聞いてます。そういう訳で、よぉーく見るとロットリングを使ったカットとトレス線のタッチが違います。
 あと、トレス用にライトボックスが必要になるわけですが、貧乏学生はだいたいガラステーブルにクリップライトという感じでしたね。で、私の場合は、なぜか東急ハンズで買ったガラステーブルのような机でした。パイプベッドのような素材で、製図台のように角度を変えられるんですね。本当は光が透過するカッティングマットを敷きたかったのですが、さすがにそこまではお金が回りませんでした。で、透明ガラスの下から蛍光灯式のアームライトで照らしてトレスをしてたわけです。

 苦労したのは、一番最初のカットですかね。なにしろ一番最初の、しかも主人公のカットですから。B5の大きめのサイズの方でしたけど、主人公の顔は1cm位の大きさなんですね。その大きさだと目鼻口は省略するのが普通だと思うんですが、さすがにそういうわけにもいかず、しっかり描きましたよ。白目は入れなかったと思いますが、陰も入れたし(さすがに2段落としはしてません)、口なんか少しずれただけですごく変な顔になってしまうんで、手が震えてたんじゃないかと。今じゃ描けないかも、、、
 2のA子のカットは、主人公の方は別の人が担当しました。(確か監督だったよーな...)で、撮影の時になってそれぞれのセルがどうなっているのか分かったわけですが、絵コンテにはない動きがあって、確かレイアウトも見た記憶がなくて、撮影台の前でしばらくどうしたものか、迷ってしまったのではなかったかと。A子の方が動いてて動画も多かったので、A子の動きに合せて主人公の笑っているところのリピート回数を調整して、A子が主人公をにらんで少ししたら主人公が気づいて「ヤバッ」って感じになって、その後A子が猫に向かって手を出したら主人公はそれを見て可笑しそうに...という流れになるように、タイムシートをその場で書き込んだか、ないまま撮影したかのどちらかでした。でも、そのカットをフィルムで見た兄は「芝居してる」と評してくれたので、何がどう幸いするのか分からないもんだなと思いました。

 夕焼けのシーンはいろいろ言われてますが、担当カットの比率も多いし仕方ないですね。横顔のカットは、半露出バリバリでタッチも違うし、別人と言われても反論できません。そういえば作画監督の修正もあったように記憶してますが、修正しようがないような旨のコメントがあったような...(正面のカットだったかも) ただ、作画監督の描いた横顔は正直いい表情じゃなかったので、独断で自分の原画のまま仕上げてしまったのかも知れません。寝転ぶカットも、直前のカットで左側の夕日を見てたはずが、作画監督の原画は正面を向いたまま寝転がるだけというつながりのない絵だったので、その流れを直して、あくびをしながら寝転がるという動きにしました。寝転がるときはどうなるのか、アパートで試したら、反動で足が伸びてから元に戻るのが自然だろうということでそういう動きにして、そうやってあのカットは仕上がりました。3コマ撮影だったと思います。
 作画監督だったW田氏は最近何かと注目されているようで、嬉しい限りです。機会があったら久しぶりに話をしてみたいですね。


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