撮影マニュアル

 これは私が大学在学中の1986年に記述したもので、現在の状況にはそぐわない点や認識不足の点が多くあります。書き直すことも可能ですが、一つの記録として基本的に当時の表現のまま掲載しました。なお、残っていたコピーを原稿にOCR処理したものを基礎にしているため、誤字、脱字が残っている可能性があります。気付いた方はメールくだされば幸いです。
 また、文中には関係者向けの略語が多用されています。代表的なものは以下のとおりです。
B.G.=Back-Ground=背景/BL=BLack=黒/F.I.=Fade-In=溶明/F.O.=Fade-Out=溶暗/k=Koma=コマ=8mmフィルムの映像枚数の単位/O.L.=OverLap=(映像が)重なること/S=Second=秒/Z.B.=Zoom-Back=ズームバック/Z.U.=Zoom-Up=ズームアップ

I はじめに

 このマニュアルは、私こと.....が、中大アニ研の撮影監督として1年間仕事をしてきて感じたこと、改善したかったこと等を文章にまとめてみたものです。興味のある方は、このマニュアルを始めとして、他の機材の使用説明書、関連誌等を読んでみて下さい。そして、より快適に、素早く、かつ高度な撮影が出来るように尽力して下さることを願うものです。
 なお、各説明書等に書かれている事項については、省けるものは省いておきましたので、そちらとも併せて利用されると良いかと思います。


II Hard編

1:カメラについて

FUJIのnew ZC-1000を使用中。現在は生産中止になっている。特長として、
・正転、逆転撮影が自由に出来るので、O.L.時や多重撮影時に便利である。
・シャッター開角度が調節出来るので、F.I.、F.O.、O.L.が簡単に出来る。又、スーパー、Wラシ、半露出の調節等に便利である。
・本体にコマ単位のカウンターが備わっているので、巻き戻して多重撮影をする時に役立つ。
・7.5mm〜75mmの10倍ズームレンズが備わっているので、広範囲なフレーム設定が可能。
等が挙げられる。この他にも数々の機能があり、アニメーション撮影用としては8mmカメラの中では最適である。
§電源について
 本来はSUN-III×4を電源として用いるが、経済性の面からNi-cd電池を使用している。電圧は下がるが(1.2V×4=4.8V)、実用上差支えない。尚、本休のDINジャックに外部電源端子があるので、ACアダプターによる電源供拾も可能なはずである(→撮影記録参照)。
§カウンターについて
 何分、本体のカウンターが小さく読みずらいので、撮影コマ数確認に時間がかかる。そこで、デジタルカウンターの装着を考慮してみてはどうだろう?
 DINジャックにTAPE-START端子があるので、ここから信号を取出してカウンターにつなげる(カウンターの製作は、理工系の詳しい人にでも頼むしかないだろう)。カウンターは3系銃位用意して、用途に応じていつでもリセット出来るようにしておく。そして、本体のカウンターにはODOメーター的な役目を持たせるのが良いと思う。そうすれば、「そろそろフィルムがなくなる...」という心配がなくなり、より効率の良い撮影が出来るのではないかと思う。

2:フィルムについて

 8mmには現在2種類あり、スーパーとシングルに分けられる。前者はELMO、CHINON、CANON等々のFUJI以外の全メーカーが採用しており、後者はFUJIのみである。相違点はまずカートリッジの形状であり、スーパーでの多重撮影は非常に困難である(事実上不可能に近い)。他にもフィルムベースの材質、厚さ等あるが、フィルムそのものの差はほとんどなく、編集時には一緒にしても特に支障があるわけではない。
 当会ではシングル-8を使用している。シングル-8フィルムには感度でASA-25とASA-200の2種類があり(それぞれR-25、RT-200と表記される)、更に磁気テープの有無等によりサイレントとアフ=レコ(FOR AFTER-RECORDING)とサウンドに分けられる。サウンドフィルムは同時録音用で、他の2つと若干カートリッジの形状が異なり当会では使えない(ZC-1000はサイレント=カメラ)。サイレントには磁気テープが無いが、アフ=レコには塗布済みである。「共学・驚愕学園」までは費用節約の為にサイレントで撮影・編集をして、マグネット=コーティング(M.C.)の後に録音をしたが、M.C.は結局費用が割高になること等から、最初からアフ=レコで撮影してもいいと思う(費用も特に変わらないはずである)。感度であるが、アニメーションの撮影では被写界深度やシャッター速度について考慮する必要はなく、露出の問題はランプで処理できることから粒子の細かいR-25を用いる。因みに8mmフィルムにはリバーサルしかない。
 尚、R-25とRT-200とでは、僅かではあるが発色が違うようである。かつて「りばいばる予告編」を撮影した時に、肌色の色合いがR-25ではオレンジ色に近く、RT-200ではピンク色に近く表現された。個人的にはRT-200の発色の方が好きなのだが、R-25の方が実物に近いのは確かである。又、何よりも粒子が細かいという点でR-25の方がいいと思う。加えると、R-25はデイライトタイプなので、照明に写真用電球を用いている当会ではブルーフィルターを装着する必要がある(RT-200では不要)。これにはkenkoのMC-c12を使用している。かつて、あの古市氏が「c12ではホンの少し青みが足りない」旨のことを話していたと聞くが、実際にc4フィルターを加味してみたところ、返って青みがかかってしまった。(詳細は「照明について」を参照)

3:照明について

 TOSHIBAのフォトリフレクタランプ(SPOT-300W)を2灯使用している。色温度・価格・寿命(点灯時間)・使い易さ等、どれをとってもこれに勝る物はない程である(唯一の難点は発熱すること位)。以前('85.8まで)はFLOODを用いていたが、その差は照射角のみで、後者を使わなければならない理由が考えられなかったことから、私の独断でSPOTに変更した(→撮影記録参照)。150Wを4灯用いるという案もあったが、特に利点もないので実験していない。他にはアイランプなるものもあるが、メーカーの信頼度を考えると東芝の方が良いと思う。
 このランプは写真用電球と呼ばれる物で、本来ならばタングステンタイプのフィルムを用いねばならないのだが、デイライトタイプを使っている当会の場合、色温度を補正する為にブルーフィルターを装着する必要が生じる。これには前述の様にKenkoのMC(Multi-Coated)-c12を用いている。c12の"c"はフィルターの色を表し、次の"12"は色の濃さを表わしている。以前、「草原の星」の演出・撮影担当であった.....氏が、「c12じゃぁちょっと足んないんだよね」と言っていたと人伝に聞いて、当時実際に個作を撮形して色感に疑間を持っていた私は、独断でc4フィルターを購入、付加してみたところ、出来上がったフィルムは若干青みがかかってしまった(作品としては第8回アニ研連上映会OPの当会担当部分と84年度個人作品中の....の「危険な関係お弁当編予告」にあたる)。因みに早稲田大アニ研制作の「最後のウォークライ」では、c12にc2を加えて撮影したという話である(参考「たっぷVOL4」)。
 ホルダーにはLPLランプホルダーのポピュラーを使用している。これは、ただ単に私が撮監になった時点で会の機材として存在し、実用上間題なかったからであって、出来るなら買い替えたいものである。先代の撮影担当者がこれを購入したのは、単に安いからという理由だけだと思われるが、もし買い替えるとするならば、同製品のDXタイプか又はジョイント部のしっかりした物が良いと思う。或いは小型自由雲台を用いて自作しても良いかも知れない。

4:フィルターについて

 撮影台とカメラのレンズとの関係で焦点距離が合わないので、クローズアップレンズを用いる。これにはかなり旧型の物(PX-1)が使われているが、おそらく現在のKenkoのNo.3と同等品と思われる。このクローズアップレンズはレンズ面がかなり突出ているので、この前面に更にフィルターを加えることは不可能である。よって撮影時は、カメラレンズの次にc12・PX-1の順に装着し、他にフィルターを使いたい場合にはSQフィルターを用いることになる。SQフィルターとはKenkoから出ている製品で、同一規格(76×76mm)の角型のガラスorプラスチック製フィルターをマルチホルダーと呼ばれる物に差込み、各々のフィルター径に合ったアダプターリングでレンズに装着するという物である。主な利点は、
・アダプターリングを合わせてしまえばシリーズ全ての製品が使えるので、元来はフィルターの種類が少ない大径レンズのカメラに便利(ZC-1000のフィルター径は62mm)。
・差込み式なのでフィルターの交換が簡単である。
・金属製の丸枠を使わないので、従来の物より比較的安価に購入出来る。
等である。「共学・驚愕学園」終了時点で、FOGGY(主に透過光撮影時のボカシ用)・レインボーイメージHALO(光源を中心に虹模様の円が出来る)・各種カラー(セロファンを貼った物で、赤・青・黄・緑・オレンジ・ピンクがある)の3種類がある。が、HALO及び同シリーズの48×とSQは、光源がフィルターの中心にないとカタログ通りの効果が現われず、実際には使い物にならないので注意が必要である。他のフィルターについても、購入前にその効果や必要性について確認すべきである。それから、当会には他にクロス=フィルター(光源から十文字に光条が伸びる)があるが、上記の理由から「草原の星」で使用して以来使っていない(使う気になれば使えるが、クローズアップレンズとレンズの間に装着しなければならない)。あと透過光撮影時のフィルターについてだが、色補正用にc12を加えたことにより透過光撮影(絞り開放)と通常撮影(F2.8〜F4)との差が少なくなり、「ぱれーど」の透過光には「草原の星」の様な「きらびやか」という印象は失われてしまった。私は、透過光撮影時にはc12は不要と思っているのだが、何分付け外しに手間がかかる(下手をすればピントがずれるので合わせ直す必要が生じる)ので、c12を付けたままの透過光撮影もやむなしとするのが妥当かと思う。
 これから先、購入を考えても良いと思われるフィルターには、ミストサークル・アイリスマスクセット・レインボーイメージ(36×以下)・ミラージュ等といったところか...
 最後に一つ注意しておきたいのは、特殊効果用のフィルターはあくまでも味付け的なものであって、これにばかり気を取られることの無いようにして欲しいということである。

5:反身射板等について

 撮影のセッティングに必要な物として、標準反射板・新聞紙(ピント合わせに使う)・フレームがある。今のところ新間紙は反射板の裏に張付けてあるが、これは間に合わせ的に仕立てた物なので、きちんとした物を用意した方が良いと思う。新聞の縮刷版や株式市場欄の縮小コピーの様な物を、スプレー糊で反射板の裏に張付けておくのである。フレームは未だ別物になっているが、一緒にしてしまうことも可能な筈である。
 さて、ここで問題なのは何と言ってもフレームである。知っている人もいると思うが、「共学・驚愕学園」でのフレーム合わせは非常に面倒であった。中心がずれるのだ。上下方向はそうでもないのだが、左右方向がひどい。左側の1cm位が、ファインダーで見えない所も余計に写り込んでしまうのである。原因は・・・・・・果して解らない。カメラのフィルムスレイディング部のズレか、ファインダー部か、又はファインダーに付けているNikonのアングルファインダーか、或いは映写機側に原因があるのかも知れない。とにかく、上がったフィルムを見ると設定したはずの画面の中心がズレているので、補正して撮影しなければならない(上下方向のズレは映写機のFLAMEで調整出来る)。今回は、スケジュールの都合上カメラを点検してもらう事もフレームを設定し直す事も出来ず(気付いたのは夏休み中)、撮影時に補正するしかなかったが、出来るなら事前にフレームがどの位はみ出すのかを調べ、新たに設定し直すべきだと思う。経験者として言わせて貰うなら、実際の撮影時には少なくとも2回、多い時には10回近くもフレームを合わせる訳だが、その都度補正を考慮しつつ合わせていくのは、非常に手間がかかるし神経も使う。それに何よりも不確実でリテイクになる恐れがあるので、何とかして避けるようにしたいものである。尚、ラインテストが始まるとカメラを点検・修理に出すのが難しくなる事、また制作の途中でフレームを変更すると、演出・レイアウト・作画(仕上げ)・美術・撮影の各担当者間で様々な不都合が生しる恐れがあるので、遅くともレイアウトを切り始める前に済ませるべきである。
 尚、反射板とフレームは撮影の時に頻繁に使う物であるから、粉失しないように常時分り易い所に置くのを心掛けること。

6:撮影台について

 マンテンのファングルで枠を組立て、9mm厚のベニヤ合板に透過光撮影用の穴をくり抜いて取付けた物を使用している。「ぱれーど」の時には、カメラ固定部分に30cm位の短いファングルを何本も寄せ集めて使っていたが、ごちゃごちゃしているだけで意外にぐらつので、独断で組立て直した。注目して欲しい点は、
・以前は撮影台に寄掛かるだけでぐらついていたカメラの固定方法を、三脚取付用ネジ穴とカメラ上部のアクセサリーシュー取付用ネジ穴の両方で固定する方式に変えたので、カメラのぐらつきが殆ど無くなった(ズームを最大にして、台を両手で思い切り揺らしてみて僅かにぶれる程度)。
・撮影する台の部分を2mm厚のベニヤ板から9mm厚の頑丈な物に変えたので、透過光撮影時に台が盛上がるなどという事も無くなった。
・フレーム・カウンター・シャッター等の確認が行い易い様に、撮影台のフレームの一部を組立て直した。
の3つである。今までのところ、これといった難点は無いが、余裕があれば
・撮影時に繁雑になり易いセルを整理整碩しておける場所を設ける。
・同じ様に、フレームやハサミ等の備品を置いておける場所を設ける。
・現在用いているネジを、へビーボルトナットからジャンボボルトナットに替える。
・角の部分に使っている三角プレートを、アングルパイプ等に替える。
・ロック機構付きのキャスターを取付ける。
等を考えてみると良いだろう。

7:備品その他について

 現在、撮影に無くてはならない備品には、プラ板×2・金属製スケール×4・タップ×2・ハサミ・バッテリー充電器があり、消耗品としてガムテープ・両面テープがある。フィルムとランプは常に補充しておく必要がある事は言うまでも無い。これらは頻繁に便う物であるが故に、同時に返って無くし易い物でもある。整理・保管等を怠らない様に。尚、ガムテープによる固定は、撮影中のランプの熱で剥がれ易くなる(ひどい時は1cut撮り終らない内にずれてしまう事もあった)ので、B.G.の固定以外には使用しない方が良い。プラ板の固定も、両面テープで行った方が熱の影響を受けにくくなる様である。
 最後にレリーズについで一言。「ぱれーど」までは、一般のフレキシブルワイヤーを用いたカメラレリーズを使用していたが、短くて意外に痛み易いものだった。そこで、同じく「共学・驚愕学園」の撮影監督だった....氏に「こっから(カメラのRELEASE端子)レリーズを引っ張れるんだけどぉ・・・中沢君持ってなぁーい?」と冗談半分に尋ねてみたところ、彼は何とOLYMPUSのREMOTE-CONTROLLERを取出してみせてくれたのだ。実は・・・彼は趣味としてカメラをたしなんでいたのであった!(尤もそれが理由で撮監に選ばれた訳だが・・・はっはっはっ・・・) このリモコンは、コードが5mと充分長い上に8mmカメラにも使える2.5mmプラグ(しかもL型!)が付いているので、早速「共学・驚愕学園」のラインテストから使い出したという訳である。以後、レリーズがフィルムに写り込むという失態が無くなった事は、意外に知られていない事実である。


III Soft編


1:Technique

 アニメーションは謂わば総合芸術であり、企画段階から設定、作画、美術、撮影、編集、録音、演出の各方面に於いて高度な知識、実力が要求される。撮影は、その制作過程の一つとして非常に重要な役割を担っている。そういう点で、撮影の果たすべき役割は単に仕上がったセル、B.G.を重ねて撮るだけではなく、タイミング変更で作画の不備な点を補完したり、或いはその場面の雰囲気に合った効果を取り入れたりすることも含まれるのである。より良い作品を創る上で撮影は何をすべきか? ここでは撮影時に処理する効果、つまり撮影でなければ成し得ぬ技術(やたら細かい設定をする、三段落としの影をつける、全編フルにする、加えて背展動画にする、モブを全て動かす、細かいタッチを入れる、無数の破片の中を無数のミサイルが飛び交う、等々ではなく、例えば四段引きをする、0.125mm/kで引く、四重撮影をする、引きながら透過光撮影をする、半露出しながら引いて更にO.L.させる等々)について説明する。


1 フェードイン(F.I.)、フェードアウト(F.O.)、オーバーラップ(O.L.)

§意味、内容
 最も初歩的な技法で、真暗から次第に明るくなって画面が現れるのがF.I.であり、その逆に次第に暗くなっていくのがF.O. 2つ以上の画面を重ねるものがO.L.であり、通常はF.I.とF.O.を重ねて画面が次画面と重なりながら次第に変わっていくものを指す。又、画面が次第に掠れていって真白になるのを特に「白溶」と呼ぶ場合がある。

§特徴、効果、用途
 それぞれ主にCredit-Titleや時間の経過を表現したい時、回想シーン等に多く用いられる。又、多重露光によるO.L.は、キャラの複雑な心理状況を表現するのに適している。

§条件、必要材料
 この技法は撮影時にカメラの機能を利用して行うものであるから、特別に必要とするものは無い。条件も特別に無いと言えば無いのだが、現在の手法では長さ(k数)に多少の制約がある。今までのところ、多用されるのは0.5s、1s、2sの3種類で、それよりも長いものは4sまでなら可能というところである。短い方については、一説には8k(24kに於いて1/3s)以下のものは無意味とされている(詳しくは後述)。

§撮影方法
 まずO.L.(F.I.orF.O.)させたい時間を決め、それに映写k数(24or18)をかけた数を基本にZC=1000のシャッター開角度の目盛を分割する。この目盛は等間隔ではなく、シャッターを閉じていくに従って段々幅が広くなっていくので注意が必要。撮影が進みいよいよF.I.、F.O.(O.L.については後述)させるところまできたなら、シャッター開角度調節レバーを1段階すつ動かしながら1k単位で撮影していく。O.L.の場合、まず撮影中のカットをF.O.させ、シャッターCLOSE状態のままフィルム進行方向をR(Reverse)にしてF.O.の最初の部分まで巻戻し、次のカットのセッティングが完了したなら、忘れずにフィルム進行方向をF(Forward)にして、そのカットをF.I.させる。多重露光の方法については要するに巻き戻しと撮影を繰り返せばよいのであるが、ポイントとなるのは露出の割合である。絵同士が重なるところ、B.G.同士が重なるところ、絵とB.G.が重なるところ(3重露出にあっては更に複雑になる)がそれぞれどういう風に見えるのかを考慮して決めなければならないのだが、色(B.G.も含む)、面積、動き、時間等の違いで微妙に変わってくるので、特定のtheoryは存在しない。何度も撮影を繰返し、実際にどの様に見えるのかを自分の目で確かめるのが一番の近道ではないかと思う。

§備考、注意事項
 先にも述べた様に、現在の方法では長いものには不向きである。又、シャッター開角度の目盛がずれているらしく、目盛に忠実にO.L.をするとその途中で若干暗くなり非常に見苦しい。このことはZCを使用している者にとっては悩みの種で、私の知る限りどの上映会に於いても同じ様なO.L.をしている作品が目につくのであるが、唯一千葉工業大学の....氏の諸作品にあっては、露出変化の全く無いそれは見事としか言い様のないO.L.が為されている。それから前に8k以下のO.L.は無意味ということを書いた。それは実際にフィルムを観れば分ることなのだが、24k(1s)のO.L.をしたとして、実際に画像が重なっていると人間の目で判別出来るのはその半分の12k位しかないのである。つまり8kのO.L.では僅かに4kでカットが変化することになり、これでは通常のカット切換と見分けがつかないのである。そういう訳で、O.L.には短くとも12kは必要であるという意見が存在するのである。
 多重露光をする際の巻戻しの方法であるが、当会で現在採用されている方法を書いておくことにする。前もって、ここから多重露光を始めるというところでカウンターをリセッ卜しておく(シャッター開角度言調節レバーをOPEN側に押込み、Sの位置まで戻す)。シャッターをcloseにしてフィルム進行方向をRにする。撮影k数を18(12or24)にして、カウンター998〜995あたりまで巻戻す。カウンターが1kの半分程ずれているが、フィルムの進行方向をFにし撮影k数を1kにしてシャッターを押すと元に戻るので、カウンターが000になるまでcloseのまま送る。後はシャッターを希望する位置まで開けて、次のものを撮影すればよい。この方法を採用してからは、多重露光の際のリテイクが半分以下になった。


2 スーパー

§意味、内容
 フィルムの感光性を利用した技法で、白色に近く明度、彩度の高い色を多重露光によって過度に感光させ、光った感じを表現するものである。

§特徴、効果、用途
 多重露光を用いた手法(透過光、Wラシ、半露出、etc)の中では、比較的手軽に出来る技法である。2重、3重と重ねることも容易で、その度合いも各々自由に変えることが出来、種々のCamera=workにもある程度は対応出来る。一般に間接的な光を表現するのに適しているものと思われ(直接的な光には透過光の方が適当)、ガラスや鏡に映り込む風景、ハイライトの表現には最適である。反対に、影等を表現することは本質的に無理であって(これは半露出に頼ることになる)、一部で有名な「黒いスーパー」は理論的にも実際にも不可能である。

§条件、必要材料
 上記のように、スーパーで表現する色は明るいものでなければならない。必要なものはスーパーさせたいものを別セルに描いたもの、黒ラシャ紙等の黒いもの(画用紙等にポスカラのBLを塗ったものが好ましい)の2つである。尚、これはセルの場合であり、ペーパーに於いてはスーパーを別動画で用意し、スーパー以外の部分を同様にBLで塗りつぶすか、又は切抜くかしなければならない。このように作画にも関係する技法であるから、作画INする前に担当者への事前連絡が必要となる。

§撮影方法
 通常撮影の後にO.L.等と同様に希望位置まで巻戻し、シャッターを希望の位置まで開ける(今までのところは50%スーパーが最も多く用いられている)。B.G.を黒ラシャ等に交換し、スーパーのセルを撮影していく。スーパーがCutの途中で終ってしまう場合(撮影のフィルムがまだ続く場合)には、シャッターを閉じてCutの終りまでフィルムを送っておかなければならない。

§備考、注意事項
 スーパーさせる部分が明るい色であっても、重なる部分が明るい色の場合は目立たなくなってしまう。よって、スーパーが重なりそうな箇所は出来る限り暗い色で仕上げるようにしておくど良い。


3 半露出、Wラシ

§意味、内容
 半露出とは、多重露光と併用して画面のある部分をBLマスクで覆い露出を落として暗くすることを指し、Wラシとは同じような手法を用いて、今度はBLマスクではなく希望する色を文字通りダブらせて「透けた」感じを出すものである。夫々の効果を考えると両者は別物ではあるが、撮影方法は全く同じであることから、半露出を黒のWラシと考えても差支えないと思う。

§特徴、効果、用途
 まず半露出であるが、カゲを表現するのに最も適した技法ということができる。これは半露出の手法が、実際にできる影そのものと酷似していることによる。カゲを表現するには塗り分けを用いるのが一般的であるが、それだけでは表現できないカゲ(B.G.に映り込むキャラのカゲ、止メ絵の上を動くカゲ等々)を表現したい時に適している。カゲだけではなく、場合によっては「水」を表現することも出来る(「カリオストロの城」参照)。Wラシについては、その透けた感じによってベールやレースのカーテンなどの半透明なものを表現するのに適している。

§条件、必要材料
 該当cutがFixであることが望ましい。それというのも、半露出、Wラシ共に撮影方法に手間がかかるが故に、種々のCamera=workになじまないからである。しかし、このことは絶対条件という訳ではなく、単純な引き位ならば併用しても構わない(但し、撮影で相当の苦労を強いられることを覚悟しておくべし)。尚、Zoom=upとの併用は避けた方が良い。ZCのズームリングには細かい目盛りが刻まれていないので、多重露光でズレる可能性が大きいからである。
 必要なものは、スーパーと同じように別セルに用意したマスクのみである。ペーパーに於いてセルを便わずに半露出、Wラシをするには、同じ動画をトレスするか最低でも切抜くかしなければならないので、セルを併用した方が無難であろう。

§撮影方法
 通常のセル、B.G.の組合せと、それにマスクを加えたものの2つを多重露光させることになる。シャッター開角度で露出調節を行ない、2つの内のどちらか一方を撮影し(どちらが先になっても構わない)スーパーと同様にシャッターを閉じて巻き戻し、残った片方を撮影する。露出は2回の撮影で100%となるように調節する。(50%+50%が一般的)。

§備考、注意事項
 注意すべきは、2回の撮影でフレームやセルNo.がズレないようにすることである。面倒なセル交換をわざわざ繰返すのは、変化をつけたい部分の為だけに行うのであって、他の部分は普段と同様に仕上げなければならないからである。あとは、シャッターを閉じたり開いたりすることが多いので、確認を怠ってCLOSEのまま撮影するなどという徒労をしないよう注意すること。
 先ほど、撮影完了の時点で100%の露出になるようにすると書いたが、演出上必要ならば何%になっても構わない。又、2回の多重露出に限らず、3回、4回と増やしてもいっこうに構わない。只、マスクの用意と撮影作業が極端に複雑になることから、3回以上の多重露光をしたという実例は殆ど聞かない(「共学」S7-C17(羽石)は3重半露出+スーパーの4重撮影の予定だったが、Z.U.が加味されていたこと、撮影が白門祭を間近に控えた10月20日頃だったこと、及び作画担当者であり撮影監督でもあった本人が不在だったことから、単なるZ.U.のみとなった:当人の言訳『仕上げに追われて撮影に行けなかったんでぇい!』)。


4 引き

§意味、内容
 人間が視点を変えるには、眼球を動かす、頭部を回転させる、自らを移動させるの3つあるが、アニメーションの撮影に於いては視点(カメラ)は固定されているので、対象物であるセル、B.G.の方を動かすことで上記の様な効栗を出す訳である。実写に於いては視点となるカメラそのものが回転、移動すること(PAN台、ドリー移動等)はよくあるのだが、それらが不可能なアニメーション撮影では、独自の専門用語が幾つか存在する。それも含めてまずは基本的なCamera=workについて説明しておきたい。
PAN〜カメラを支点として水平方向へ回すこと。
TILT〜PANと同じように、垂直方向へ回すこと。
Follow〜動いている被写休を横から(進行方向と垂直になるように)とらえつつ、追いかけるように動くこと。
T.U.、T.B.〜カメラが被写体に近付くこと。又、その逆をいう。zoom機構でレンズの写角を調節して遠近感を表現するZ.U.、Z.B.とは異なる。アニメーションでは両者の区別は明瞭ではない。被写休となるセル、B.G.が平面的な絵であるが故に、画面の奥行きを表現するには多くの制限があって、厳密な意味では本当のT.U.、T.B.はまず不可能だからである(疑似的表現ならば、zoom、引き等を駆使して出来ないこともない)。
Crane=up、Crane=down〜カメラそのものを上下に動かすこと(実写に於いて、カメラをクレーンに乗せて行なうことからこう呼ばれる)。
 さて、ここにいう「引き」とは、通常のサイズよりも縦、或いは横方向に長く描いたセル、B.G.を動かす(引く)ことによって上記のような効果を表現しようとする一つの撮影技法を指す。その引きには、何を引くかによって大きく3つに分けられる。
・一枚引き − 止メセルをB.G.に固定したもの、又はB.G.のみを引く
・セル引き − B.G.は台に固定したまま、セルのみを引く
・B.G.引き − セルは固定したまま、後ろのB.G.のみを引く
他にこれらを組合わせたもの、及びつけPAN(B.G.引きの一種で、動画の動きに合せて引きの長さ、方向を変えながら引くこと)がある。

§特徴、効果、用途
 基本的に視点の移動を表現するものである。他に広大な風景の表現や乗物に乗っている感覚の表現、及び、特に深い意味のない場面に引きを用いることで情趣を表現することも出来る。更に引きも一種の「動き」であることから、止メ絵だけでは間がもたないような場合に、引きを用いることでその問題を解消出来ることもある。付随的意味では、動画、仕上げ枚数が減るという魅力もある(但し、その分が撮影に転嫁されることを忘れてはならない)。

§条件、必要材料
 まず、作画、美術担当者及び演出との綿密な話合いが必要となる。どのような表現をしたいのか、視点はどう変化していくのか、引きの長さや時間はどの位必要なのか等を、各人の間に認識のズレがなくなるまで煮詰めなければならない。それが不十分であると、リテイクを出す、又はスケジュール上余裕の無い場合は、演出面で不本意なフィルムになってしまうことになる。引きの概要が決まれば、そこから必要な長さを割出し、その大きさのセル、B.G.を用意しなければならない。その際に担当者にも撮影方法を大まかに説明しておき、撮影段階で不都合が生じないように事前に配慮しておくと良い。
 尚、前にも述べたように、多重露出を用いた技法との併用は撮影の手間が倍増するので覚悟しておくこと。

§撮影方法
 引きの撮影ではまず何よりもセッティングが肝心である。これが不備無く出来れば、半分はうまくいったと思ってもいい。その具体的方法であるが、引きの種類、枚数(段)、方向、更に撮影時のSTAFFによっても変化してくるものなので、一概に書くことは不可能である。実際に撮影に参加して、そのknow-howを覚えていくしかない。セッティングが済めばいよいよ撮影に入るのだが、最も重要なのはやはり引きそのものの担当者である。1k毎の間隔を間違えることなく、正確に引いていかねばならない。彼に必要なものは、何よりも根気、次に記憶力と計算力である。他には、ガラス担当者のガラスの置き方に注意すべき位か。

§備考、注意事項
 引き担当者の補助という意味で、引きのstart-endの目盛り及び各ポイントでの目盛りを、カメラのカウンターとセル番号と共に前もってmemoしておくと、確認し易く失敗も少なくなるようである。とにかく、最もリテイクの多い技法であるから、慎重に慎重を重ねる位の心構えで取組んで欲しい。


5 透過光

§意味、内容
 多重露光で被写体に直接に近い光を用い、光源を表現する技法である。

§特徴、効果、用途
 スーパーに酷似した部分が多いのだが、輝度がかなり高くなることによって用途が違ってくる。まず直接的な光(光源)を表現するのに適している。更にスーパーと同様に、マスク、又はフィルターにセロハン等を使用すれば色をつけることも可能である。他には、背景に透過光を用いて(全面透過光)心象表現をすることも出来る。

§条件、必要材料
 Wラシ同様、マスクが必要となる。但し光を透けさせるのであるから、そのようなマスクを用意しなければならない。黒ラシャ紙に透過光したい部分を切抜くか、セルにBLを塗ったもののどちらかになる。大きくて簡単な形の場合は黒ラシャ、入組んだ複雑な形の場合はセルを用いるのが定石であるが、両者を併用するとマスク作りが楽になる。
 条件については殆どスーパーに等しく、あまりに複雑なCamera=workとは馴染まないので併用を避けるべし、ということである。

§撮影方法
 殆どスーパーと同様であるが、撮影を始める前にライトの光を透けさせることが出来るようにしておかねばならない。巻戻した後にB.G.を取払い、ライトのセッティングを変えてマスクを置いてみる。ライトを点けてファインダーを覗き、ライトの光が必要部分以外に漏れていないかをチェックする。OKであれば露出を解放にして撮影を始めるが、もしも漏れているという場合には、黒ラシャ紙を何枚か用意して光が漏れそうな部分をカバーしながら撮影することになる。
 「ぱれーど」では、プラ板や台がライトの熱で反ってしまうとかで扇風機で風を送りながら撮影したのだが、「共学」では台の板を換えたこと、及び透過光のcutが少なかったこと(僅か2cut)から、特別な処置は採用していない。

§備考、注意事項
 撮影後、次の撮影を始めるにあたり露出を合せなければならない。これを忘れたが為にリテイクとなったcutが「ぱれーど」では相当数あったという。又、「草原の星」では古市氏が色の違いによる露出変化を計算していたが、彼が退会してしまった為に遂に伝承されないままになってしまった。加えてFoggyフィルターやパンストを貼ったものでボカシを表現しようとしていたようであるが、実際にはあまり効果が無いとのことで使用していない。ピントをずらす等の方法を研究してみてはどうかと思う。


6 入射光

§意味、内容
 画面外の一点からまぷしい位の強い光が差込んでくるように見せる表現方法である。

§特徴、効果、用途
 画面に磨きをかける為のもので、クライマックス=シーン等に用いられることが多い。又、朝のまぶしい感じや夏の強い陽射しの表現にも適している。

§条件、必要材料
 プ□の作品では非常に奇麗な入射光が便われているのだが、何を使っているのかは筆者には分らない。アマチュアに於いては「ふぁんろーど」OPAにみられた位で、当会ではそのDATAを基に「ぱれーど」にて数cut用いてみた、が「まぶしい」というには程遠く「チラチラする」程度のものであった。その際に便用したものは、pia-lens(商品名)、モール(店頭等で飾りに使われるもの)の2つである。なにしろ、未だ成功したとは言い難い技法なので、何が必要なのかはこれから研究していって欲しいものである(一説にはスリットが必要とか、鏡にライトの光を反射させるとかいう話もある)。
 条件は特に無いが、性質上余り多用すべきものではない。

§撮影方法
 「ぱれーど」での撮影方法を参考として書くに止どめる。STAFFの積極的な実験を期待したい。
 通常撮影後、巻戻してカメラにSQホルダーを取付け、それにpia-lensをセットする。ランプを外してモールに直接光を当てながらファインダーを覗き、希望する方向から光が差込む様にpia-lensの向き及びランプとモールの位置を調節する。絞りを解放にし、k数を12kor18kにしてファインダーに光が見えているうちにシャッターを押して希望k数分撮影する(私見では、k数を36k位にしておいた方が光の動きがゆっくりとなりbetterではないかかと思う)。

§備考、注意事項
 くどいようだが、使ってみたいならそれなりの努力をしてみせて欲しいと思う訳だな、これが。


7 ストロボ効果

§意味、内容
 そもそもフィルムというメディアは、1秒間に何十もの画面を映し出すことで残像という生理的現象を利用し物休が動いているように見せるものである。その残像は通常は意識されない程度の僅かなものであるのだが、それを意図的に残すようにすることで特殊な効果を持たせようとするものである。

§特徴、効果、用途
 動画では表現出来ない独特の効果となり、「動き」を印象深くする為に用いられ、決めポーズ等格好をつける場合に多用される。

§条件、必要材料
 幾重もの多重露光を行うことから、白っぽい画面では何も見えなくなってしまう可能性があるので、B.G.をBL(又はそれに近い黒い色のもの)にするとか、なるベく色をつける等するようにしなければならない。特に用意するものは無いが、動画や引き、zoom等何かしら変化のある画面でなければならない。

§撮影方法
 まだ実際に使用した例が少ないので、ここではその時の具休的方法について書くことにする。それ以外の方法もこれからいろいろと試してみて欲しいと思う。
・「りばいばる予告編」 − 主人公がFace-UpからFull-shotになるところ
通常の1kの代りに100%、75%、50%、25%で計4k撮影し、3k巻戻して引きとzoomを行い、それを繰返す(最後の方に重なっているのは単なる撮影ミス)。
・「ぱれーど」 − EDのup後に全面透過で男の子と女の子が画面を横切るところ
BLのB.G.で通常の撮影をし、全面透過光にしてマスク兼用にしたセル(仕上げ終了後、BLを塗って光が透けないようにしたもの)を、正規の番号と1つ少ない番号の2枚を重ねて撮影していく。

§備考、注意事項
 「りばいばる」での例が成功したのは、止メ絵の引きとzoomだけで重なる部分が多く、髪や制服に濃い色のポス=カラを用いたからであり、B.G.はBLにするのが通例である(さもないと画面が白くとんでしまう)。


8 ゴンドラ

§意味、内容
 セッティングに際しセル、B.G.を多段層に配置し、実際に間隔をおくことで遠近感を表現しようとする技法である。

§特徴、効果、用途
 画面の一部分をぼかすことが出来るので、遙か彼方の遠景の表現や望遠レンズで見たような効果を表すのに適している。又、手前にあるものをカメラの直前にあるように見せることも出来る。

§条件、必要材料
 間隔をとる為のスペーサー、透明ガラス、補助照明等が必要と思われる というのは、これらを用いて実験はしてみたものの、実用に耐え得るような結果は出ず失敗に終ってしまったからである。成功させるには何か他のものも必要なのかも知れない。
 考えられる条件としてはセルでは特に無いが、ペーパーで採用するのは困難で、切抜いてセルに張付ける等しなければならない。

§撮影方法
 そういう訳で、未だ撮影方法は研究中である。尚、実験の具体的DATAは撮影記録ノート参照のこと。

§備考、注意事項
 ピントのズレは、レンズの焦点距離や被写界深度とも関連するものであるから、それらを研究すると役立つのではないかと思う。


9 その他

 以上の各撮影技法の他に撮影の段階で行い得るものに、k数変更(順序変更、削除)、引き等での貝休的DATA変更、決定等がある。ラインテストの結果が思わしくないのに何の変更もされぬまま本撮影に回ってきた場合(他のSTAFFが忙しい時に多い)に撮監が独断でタイミング変更をした例が幾度かあった。但しこの場合は、撮影担当者が演出としての技量を持合せていることが必要条件であり、そのような自信が無いのにこれらを行使するのは単なる職権濫用に他ならないことを肝に銘じておくこと。



2:Instance


1 撮影監督心得−撮監のなすべきこと−

 撮影時に撮監が行うべき作業は、
・基本セッティング(最低限でもピント、露出、フレーム合わせ)
・作業の指示、補助、実行
であり、この他に考えられるものには、
1:撮影に回ったセル、B.G.のチェック
2:上記で欠陥があった場合のリテイク指示
3:撮影の記録
4:フィルムの現像出、受取、及び整理保管
等がある。この内1,2,3は進行の仕事と重なる部分が多く、特に1,2は完全に進行の仕事と言っても良いかも知れない。しかし例えどんなに立派に仕上げられたセル、B.G.でも、実際の撮影に供し得なければそれは無意味なものであるから、最低限守られなければならない事項を熟知している者がこれらの業務を行うべきである。ここで本来ならば、少なくともMain=STAFFはこのことを弁えているべきなのだが、それが通じないのがC.A.C.C.の体質であり、そういう訳で撮影業務に最も詳しくあるべき撮監が行うのが妥当に思う。但し受渡し等で不都合が生じるような時には、担当者にチェックのノウハウを教え込む等して作画(美術)担当者の目前でチェックを行わせ、不備な点があったなら即座にリテイク指示と一緒に差戻す。そうすれば日数のロスも減るはずである。
 3については、形式はともあれ進行が把握しているべき事であるのは言うまでもないが、その記録では具体的なDATAやリテイク理由等は分かり兼ねることもあるので、やはり撮監が独自に撮影専用の記録を取っておくべきだと思う(「記録」を参照)。
 4についてはあくまでも原則ということであって、責任の帰結上撮監が行うべきという位で実際には誰が行こうと問題はない。事実フィルムが紛失するような事態は皆無に近く(この点で「共学」制作中の10月いわゆる「修羅場」に於いて、撮影した筈のフィルムが1本見当たらなくなった−正碓にはあれだけ撮影した割にフィルムになっているカットが少ない−より正確には撮影して現像所に持って行った筈だが取りに行っていないのか、果ては撮影していないのか記憶がはっきりしない−という事態になったことは注意する必要がある)、加えて撮監が毎回現像所に赴くのは身体的・精神的にも極度に疲労する、という理由がある。だが原則は撮監が行くことであり、例外の適用にはあくまでも慎重でなければならないから、撮監たる者は毎回現像所通いをする位の気構えは持っていて欲しいものである。尚このことは、実際の撮影作業でもあてはまることであるのも忘れないで欲しい。


2 撮影を行う前に−準備すべきこと−

 さて作画が進み、ラインテスト或いは本撮影を行う段階になったとして、事前に点検しておかねばならないことがある。
§フィルム、ランプの在庫
 1回の撮影でフィルム2本に渡って撮ることは滅多に無いが、ランプは途中で切れた場合に在庫が無いと撮影不能となるので、少なくとも常時2灯の予備を用意しておく。
§バッテリーの充電
 バッテリーの充電が不十分或いは前回に引続いて使用する場合、途中でフィルム送りがおかしくなることがある(特にReverse撮影時に顕著である)。とは言っても、充電をしている訳にもいかないので乾電池に頼る他に無いが(この点でコンビニエンス=ストアは便利である)、普通に充電してあれば、通常撮影時に途中で動作が不確実になることはまず無いので、何よりも充電を怠らないことである。
§セル、B.G.の点検
 そのcutのセッティングを終え、撮影を始めた後で何かしら欠陥があって中断を余儀無くされる場合がある。そんなことが続くとSTAFFの疲労も増えて来るので、予めチェックをしておくようにする訳である。
Check=point
セル
▼タイム=シートはあるか(使い物にならなくては無意味である)
▼セルは全部揃っているか(A,B,C...と分かれている場合に注意)
▼セルに折れ、曲りは無いか くっついてはいないか 剥がれていないか
▼大きなハミ出し、塗り残し、色パカ(色の間違い)等は無いか
▼特に止メ、リピートとなるべきセル、及び止メセルの仕上げは奇麗か
▼S-No.、C-No.、セルNo.、k(コマ)数等の記入がなされているか
▼順番の狂い、抜けは無いか
▼設定(場面、キャラ)上の相違は無いか
▼セルを重ねる場合、不都合は無いか
▼引きの場合、タップの位置は大丈夫か
B.G.(B.G.については演出がOKを出していることを前提とする)
▼大きさは十分か(特に引きの場合)又、フレームの外まで塗られているか
▼クミ線はずれていないか(タップ穴が開いていない場合は現物合わせとなる)
▼パースに目立った狂いは無いか(ファインダーを覗いて疑問点が無ければ良い)
▼Bookの場合、固定手段が残されているか(小さい時は手頃な紙で延長することになるがそれも不可能な場合はリテイクとなる)
 これらの中でセルについては、撮影時に補修し得るものからリテイクを必要とするものまで様々であるが、B.G.については大方が撮影時に補修出来るものである。
 以上の点検が済んだら、撮影出来るカットをフレーム、タップ位置、Camera=work(引き、zoom等)、特殊効果(主に透過光であり、スーパー、Wラシ、半露出等はF.I.、F.O.と同様、Fixフレームに準じた扱いをする)を基準として撮影し易い様に整理し、セッティングに入る。


3 セッティング

 基本的なセッティングは
1:一度済ませてしまえば後々の撮影まで行う必要の無いもの(レリーズ、ランプ、視度調節等)
2:各撮影毎に行う必要のあるもの(フィルム、バッテリー、ピント等)
3:撮影中でも度々変える必要のあるもの(露出、フレーム等)
の3種類に分けることが出来る。尚、引き、透過光のセッティングについてはそれぞれの項で述べることにする。
1:レリーズ
 レリーズのプラグをカメラ本体後部のRELEASE端子に差込み、邪魔にならない様にコードを撮影台に巻き付けながら使い易い所まで持ってくる。この時、撮影台の廻りを動いて足に引掛けたりする恐れの無い様に注意すること。
ランプ
 まず装着に際し、ロ金(ソケットに取付けるネジの部分)以外は素手で触れない様にキレイな(油汚れが染込んでいては無意味)手袋をつけて行うこと。ランプに指紋等の油分が付着すると、その部分がランプの熱で異常加熱して破裂することも有り得るからである。ランプの間隔、角度にについては、左右対称になること、台に対し約45度になることに注意し、セットしたらガラスを置きファインダーを覗いてみて反射光が写り込んでいなければ良い。尚、ランプをあまり離してしまうと露出不足になる恐れがあるので注意。
視度調節
 凡そ視力が1.0〜1.5以外の、いわゆる近眼、老眼の者がピントを合わせようとする場合には視度調節が必要となる。カメラ後部のレバーで視度調節のマットを引出し、本体側の視度調節リングでマットがはっきり見える様に合わせネジで固定する。アングルファインダー側にも視度調節機構があるのだが、はっきり言ってややこしくなるので中立にして用いていた。
 当会では慣習として、毎回異なる者がピントを合わせることは希である為に毎回視度調節を行うのではなく、視度調節を合わせた者が以後のピント合わせをも責任を持って行うとされている。だが実際にはそれ程厳密なものでもなく、普通の視力を有する者であれば(矯正してある者も含む)誰が合わせても支障ない様である。
2:フィルム
 特に難しいことではない。ただ特別の事情がない限り、途中で取出すような事はまずないので、装填時にフィルムがカメラのスレイディング部にしっかり入っていることを確認すること。蓋を閉じたら、カウンター、フィルム巻取軸が共に動いている事を確認しながら30k程空送りする。(最後に1or2k位、撮影の月日を撮っておくと良い)。
 余談ではあるが、「共学」の最後のE.D.タイトル撮影の時に蓋の開閉ノブのネジが援んでロック出来なくなり、撮影不能かと危ぶまれたことがあった。蓋を外し、分解してどうにか修理したものの、率直に言って私がいなければどうにもならなかった事態ではないかと思う。道具として必要となった精密ドライバー等や分解、修理、組立てに必要な知識、技術、度胸等々絶対に必要とまでは言えないが、やはり『備えあれば憂いなし』ではないかと思う訳である。
バッテリー
 基本としてやはり極性を間違えないこと。馴れているからといってカンに頼らずに、点検しながら行うようにせやう。
 今問題になっているのは、某A氏の1日以上に渡る過充電によって1本が馬鹿になっていることである。買い替えてもいいと思うが(\315/本)、ケースに入れる方法によっては支障なく使えるという状態なので、仕方無くそのままにしてある。
ピント
 zoomを最大にして予め用意しておいた新聞紙等を置き、ファインダー中央部の像が最もはっきり見える位置にピントリングを合わせる。以後、他の作業中にズラさない様に注意すること。
 尚、担当者はピント合わせに少しでも不安を感じたら、即座に包み隠さず報告すべきである。
3:露出
 まず標準反射板を置いて、ファインダー内が全部その灰色になるようにする(必ずしもzoomを最大にする必要はない)。本撮影に於いては更にガラスを載せて、ライトを2灯共に点灯する(要はセル、動画等の代わりに標準反射板を置いて撮影本番と同じ状況にすれば良い)。本体前部のレンズ下にあるシャッターボタンを半押しにして(軽く押せば良い)、ファインダー内上部のRed=シグナルが点滅、又は点灯することを確認し、露出リングでファインダー内右側の指針が所定の位置にくるように合わせる。「共学」では本撮影を±0、ラインテストを1/3絞りアンダーに設定した。ラインテストは±0で撮影すると鉛筆の線がとんでしまうが、本撮影のフィルムに於いては明るい(輝度が高い)に越したことはないからである。
フレーム
 設定したフレームを用意し、それを動かしながらzoomを少しづつ絞り込んで、ファインダー枠とフレーム枠が一致するところまで合わせていく。完了したら、更に少しだけzoomを絞ってフレーム枠を見えなくしておくようにする。後はフレームを動かさないように注意しながら、両面テープを張付けておいたタップをタップ穴に入れてしっかりと押えておく。又は予めプラ板にタップを張付けておいて、プラ板を動かすようにしても構わない。尚、プラ板は撮影中にずれたりすることのないよう、少なくとも3箇所以上を固定すること。


4 撮影−フィルムを無駄にしない為の注意点−

 さて、いよいよ撮影に入る訳だが、共同作品の本撮影とラインテスト(課題、個人作品等)では、自ずから方法が異なる。ここでは、それぞれの撮影全般に言える作業方法、注意点、細かい配慮等を記すのみに止め、撮影の醍醐味とも言える各種撮影技法については次の項に述べることにする。
1:ラインテスト
 ラインテストとは、動画が終了したと思われる時点で動きを確認する為にそれを一度撮影してみることである。その主たる目的は「動き」の確認であるから、フィルムになった時点でどの様に動いているのかが分かれば事足りる。よって編集の都合等の細かい問題は犠牲にされることが多い。
1 S-No.、C-No.、作画担当者名(ラインテストは当人の為に行うもの)・・・適宜(約12k)
2 ラインテスト(パターンを変える場合は続けて撮る)
3 黒k(フィルム映写、整理の際の1cut終了の目印として)・・・適宜(約4k)
おおむね上記の順に撮っていくのだが、1、3のk数についてはもっと長く撮るべきだとの異論がある。しかし、この意見は確認事項を絵コンテに記入しながらフィルムを観ようとする姿勢から生じたものであり、私には賛同し難い。
 尚、ラインテストでは動画交換の手間を省く為に、動画を順次重ねていく方法が採られている。下の動画が透けて見えるのではないかとの不安があるだろうが、その残像は個作の本撮でもない限り差支えるものではない。但し、10枚位重ねたら取り除いた方が良いと思う。
2:本撮影
 本撮影では、繁雑な作業を効率良く進めていく為に分業制が採用されている。役割は
・セル交換(数種のセルを重ねる場合は、A,B,C...の夫々に原則として一人)
・ガラス(謂わずと知れた、無反射ガラスを置いて取るだけの仕事である)
・シャッター(仕事の性質上、全休の監督業務を兼ねる場合が多い)
が基本的なものであるが、場合に応じて引き、zoom、シャッター開角度等の作業を担当する者が必要となる。そこで、まず基本的な役割について説明していくことにする。
§セル交換
 タイムシートを見ながらセルをタップ穴に入れていくのだが、リピートがある場合に注意を要する(リピートの順番、回数等)。セルの種類が多く、加えてリピートが複雑であるような時には、タイムシートを読む役割の者をつけると良い。セルを重ねる際には上下に注意すること(通常Aセルが一番下になる)。外したセルとセルの間には必ず紙を入れておくようにする。
§ガラス
 主な仕事は上の通りである。何よりもフレームを外さない様に注意すること。後は、ガラスを置く前にセルが過不足無く置かれているか、ガラスを置いた後にこのまま撮影して良いか(不備な点があるのに撮影した場合はリテイクとなる)を確認し、大丈夫であれば両手を退けた後に「ハイ」とはっきり合図を出すことである。撮り終わったら速やかにガラスを取るのだが、この時あまりに急いで、未だシャッターを押している最中に手を出したりしないように(この場合、フィルムに写り込んだか否かの碓認が出来ないので、大事をとってリテイクにせざるを得なくなる)。特に、撮影k数が増えた時に起り易い。
§シャッター
 ガラス担当者の合図を受けて、指定k数分シャッターを押す。終わったらその旨を知らせるようにすると良い。尚担当者は、ガラス担当の者と共に撮影する上で不備な点が無いかを碓認すること。
 この作業は、シャッターが電磁式のものに変わってからは、ガラスの作業と兼用出来るようになった。実際、さほど難しい作業でもないのだが、不意なことでシャッターが切れまうこともあるので、その点を注意すること。
 本撮影はMain=STAFFを中心に行うべきであるが、特に追込みの時期には、初心者である1年生を導入することも多くなるのが常である。そのような場合には、責任者たる撮監はどの作業に就くべきか? 責任及ひ作業能率の点から、ガラス、シャッターを兼ねて行うのが妥当だと思う。尚人員が豊富な場合には、自らは作業を行わず指揮、監督のみとして初心者に作業を覚えさせるのも重要なことである。
3:注意事項
・原則として私語は禁止であるが、作業性質上単純な繰返しが多く、必然的にミスが起り易くなる。という訳で緊張緩和の為の会話は仕方無いとするが、作業に支障を来たさない程度に止どめること。セル、ガラスをセットして、シャッターを押したか否かがはっきりせずに問題となることが多いからである。同様に、1cutの途中で撮影を中断する場合(撮影中に補修すべき欠陥が見付かった、STAFFに短い用事が生じた、誰かが撮影所に入ろうとしている等々)にも、シャッターを押したか否かをはっきりさせてから対応するようにすべし。
・以前は撮影中のドアの開閉は厳禁とされていたが、その根拠であった露出の変化は実際には殆ど問題にならないと判明し、現在では特に注意する必要は無くなっている。


5 後始末

 撮影すべきcutがなくなるか、FILMが終了するか、又は時間がなくなるか(現像所受付は当日分が9:00までなので、8:00を過ぎたら切上げるのが常であった)のいずれかによって撮影は終了する。終了は撮監がいるなら彼が宜告すべきであり、不在の場合は他のMain=STAFFということになる。終了したら撮影したcutを整理整頓し、撮影済(結果待ち)扱いとして他の未撮影分やOKの出たcutと区別しておくようにすると、後々の作業がスムーズに運ぶ。
 FILMを現像に出す場合には、メーターを見てFILMが最後まで巻き取られていることを確認し、蓋を開けカートリッジを取出し、元入っていたパッケージに入れて現像所に行く者に預ける。備品を次回使用の際に分り易いように片付け、ゴミ等の始末をする(「共学」までは例年、会員の部屋を撮影所として使わせて貰っていたので、ゴミの始末等の酷さで多大な迷惑をかけてしまった)。このような問題は撮影技術云々以前のものであるからして、  ...要するに、良識を疑われることなど無きようしっかりして欲しいものである(はっきり言って、大学生にもなってこんなことが出来ねーなんてのは、『情けねー』の一言に尽きるぜ!)。
 撮影終了の時点でFILMが余っている場合の処置であるが、今回撮影した内容、次回撮影の日程、内容、予算等を比較衡量し、決定することになる。今までの例では、特に急いでいない場合10mを超えていれば現像に出していた。


6 現像出

 調布市柴崎にあるFUJlカラー現像所に直接持込み、直接受取るのが慣例となっている。理由は、確実であること、時間のロスが少ないこと、長く続けていればいざという時に少々の無理を閲いて貰えるのではないかということである。
 9:00までに持込めば、当日扱いとしてその日の13:00には仕上がることになる。営業は月曜日から土曜日までの9:00〜17:00、ちなみに受付担当の「米山さん」という方がなかなかだったりするのだな... だからぁ、徹夜明けに柴崎へ行ってぇ、米山さんに受取ってもらったりするとぉ、「やってて良かったぁ...」なぁんて思ったりする訳だ、これが。


7 記録

 かねてからMEMO程度の記録はとっていたのだが、紛失し易いこと、細かいDATAを書込んでいくと分りずらくなること等の理由で、'85.5から公式記録としてnoteに残すようになった。とりあえず主な記録内容として
・年月日
・STAFF
・開始、終了時刻
・FILMNo.、使用量
・撮影場所
・撮影cut
・備考、他
等を、撮影日を基準として記録していった。しかし編集時の都合を考慮すると、FILMNo.を基準とした方が良いと思う。
 記録は撮監が行なうのが最も良いのだが、撮影作業をしながら記録をこなすのは非常に困難であるから、終了後に出来るだけ早く記入するか、又は撮影作業、記録のどちらかを依託することになる。どちらを採用するかは、撮監の裁量に委ねられているが、原則として全て撮監が処理すべきことであるから、どうしても手に負えない場合にのみ、依託するように心掛けること。


8 編集

 「共学」でのCredit=Titleには、編集として..........の名が出ている。しかし、私が実際に行った作業は編集というよりは整理というのが相応しいものであった。編集とは、現像が上がったFILMを絵コンテの順序に従いつないでゆき、EDITORで見て変更する箇所(cutの長さを短くする、順序を替える等々)が出てきたら変更する、という作業である。プ□に於いては、1k単位の編集によってタイミング変更まてもしてしまうようであるが、8mmFILMではスプライシング=テープでFILMをつなぐ為に、当会では1cut中での編集はタブー視されている。よって、途中に1kでも不都合なkが入っていれば、それが目につくものである限り、緊急の場合を除きリテイクとなる。
 さて、では私が行なっていたFILMの整理とはどういうものか。まず、現像から上がってきたFILM(白いリールに巻いてあるもの)を1cut毎に黒kのところで切断し、ラインテスト、本撮影、その他(リーダー、黒k、TEST等)に分け、それらを前回までの撮影分にカット順につないでいく。STAFFに見てもらい結果が出たら、OK、KEEP、NG(RETAKE)にわけ、更にそれを夫々のリールにまとめておく、ということをしていた訳である。というのも、記録がよほどしっかりしていないとどのリールにどのcutが入っているのか分らなくなるからであり、又ラインテスト、本撮が一緒になっていては意外に集中出来ない、というとによるものである。絶対にしなければならないというものでもないが、やっておくに越したことはない(特にスケジュールが遅れている時には好都合である)。



IV あとがき


 何よりもまず、発行が大幅に遅れてしまったことをお詫び致します。幸か不幸か、現在共同制作が中断してしまっていますので、このマニュアルの意義も半減せずに済んだ訳です。今後とも色々な技術の研究が進み、C.A.C.C.が発展することを願い、まとめとすることにします。
 終わりに、拙い文章に最後まで付合って下さいました方々へ

どうも有難うございました

.....

1986.5.14(wed)23:12 自宅にて

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