ぱれーど


 私が正式に入会したのはこの「ぱれーど」制作中の4月でした。共同作品のスケジュールでは、4月になるとだいたい作画INして、早い人は1カット仕上がっていたりします。私も普通なら課題をこなしてから、という順番なのでしょうが、そう甘いものではなく早々に3カットが割り当てられることになってしまいました。
 ですが、途中参加というとやはり何かとハンデがあったようで、先日昔の記録(私用ノート)を見返す機会があったのですが、「残っているアニメックスを譲ってください」と書き込んでました。私の場合、そういう類のものに書き込むことは滅多にないので、意外に切羽詰まっていたのかもしれません。

 担当したカットは、1つはE.D.(「得(E)体の知れない動(D)物」の略)が廃墟に来て、最初にアップになるカットです。幸いにも作画する前に直前のカットのラインテストを見る機会があったのですが、それはもうEDがビル街をひとっ飛びっていう感じでしたから、着地の衝撃がすごかろうということで、着地まではフルで動かして差をつけてみました。あと、2段落しの影がみょーに目立ちますね。それから内輪ネタですが、このカットだけEDの足の裏にはバーニヤがあります。やはり、あの衝撃を抑えるには必要だろうということで(冗談)。カットの最初なんで普通に見るとまず気が付かないのですが、逆転で見ると一発で分かってしまうのが不思議なところです。
 残りの2カットは、遊園地が動き出してから子供たちが遊んでいるのが見えるカットのうち、ジェットコースターのアップと、木馬に乗った男の子のカットです。2つとも子供たちはWラシで、更にスーパーか透過光が追加されてるためけっこう面倒でした。特に木馬のカットは、光のリングが何重にも...というイメージだったのですが、円形のテンプレートを使って描いてはみたものの、1つのリングを描くには内側と外側の2つの同心円が必要で、大きさも限られてましたから、途中でえらく後悔しました。そういうわけで、リングが消えるところはFADE-OUT処理になってます。しかも多色透過光のため撮影の手間はいかほどか。撮影さんごめんなさい。もう1つのカットも、ハイライトのスーパーがジェットコースターの最前列だけという、おかしなカットになってます。う゛ーむ。

 これも「草原の星」に続いてセル作品ですが、テーマなどは「草原の星」から一転して、派手さはありませんが不思議と心に染み入るようなものになっていると思います。技術的にも、絵柄やアクションで勝負するものではなく、背景や撮影、効果音などにも力を入れた、そういう意味でバランスのいい作品になったのではないでしょうか。当時はアマチュア作品では自前で声をあてることが多く、録音状態もさることながら役柄になりきれていない、ほとんど素のままの声はあまり聴きたくないと思ってましたので、どうやって声を必要としない、かといってサイレントでなく、BGMだけでもなく、声がなくて当然という状況を仕立てるかがある意味で腕の見せ所でした。そういう点で、この作品のストーリーはよくできていたと思います。
 声と同様に、特にペーパーでは背景をどうするかが悩みの種です。必然的にハナコやラスドリのような夢ネタが多くなるわけですね。で、このぱれーどではセルということもあって、美術の授業で描く程度の風景画が描ければとりあえず何とかなるのですが、この時に異才を放ったのが美術のO塚です(同期なので呼び捨てゴメン)。彼が描く冒頭の廃墟はこの作品のイメージをしっかりと観客に焼き付けてると私は信じて疑いません。おそらく、当時のスタッフも彼が最初に仕上げてきたその絵を見たときは、そう信じて疑わなかったはずです。

 最近AAAの掲示板を見たらこのBGMは何?ってのがあったようですが、確か「カイエ」ではなかったかと記憶してます。誰の曲かは調べれば分かるでしょう。効果音については逸話が多く、EDの足音はシンセを駆使して作ったと聞いています。あとEDが蹴った空き缶の転がっていくときの音は、監督のアパート近くの路上で、雑音が入らないように早朝に靴を脱いで生録したとか。こういうのも自主制作の面白いところですね。そういえば、その空き缶を蹴った後にEDが遊園地跡を見つけて、嬉しそうに飛び跳ねていく後ろ姿のカットが何とも言えず好きです。
 AAAの掲示板に書いたことがありますが、エンディングのテロップは何故か手間のかかる手法を用いてました。さっきの光のリングといい、今でしたらコンピューター処理で簡単に出来てしまいそうですけど、そういう手間も懐かしいですね。
E.D.のバーニア 2段落としのE.D.の耳 ジェットコースター 木馬


gallery HANE / Animation / Parade (2003.06.14 update2006.03.12)