ハナコの夢


 「ハナコの夢」(中央大学アニメーション研究会 C.A.C.C.制作)は、私がはじめて本格的なペーパーアニメ−ションに接した作品です。
 当時私は高校1年生でした。兄がアニ研で2年目で、夏休みに持ち帰った原画の色塗りを手伝ったわけです。当時はペーパーに水彩という環境でしたから、ラインテストの済んだ動画を同サイズの薄手の画用紙にロットリングでトレスし、基本的にキャラはホルベインの水彩絵具、背景はターナーのポスターカラーという組み合わせでした。ロットリングを使ったのは、トレス後に水彩絵具を塗ってもにじまないこと、線の太さが変わらないこと、濃い黒インクで描けることを満たしていたからだったと思います。今は3つ穴タップのようですが、この頃は事務用の2つ穴パンチを使ってました。動画のサイズもアップはB6、ロングのカットはB5を使うことで用紙代を節約してました。
 私も絵コンテを見て手伝ったわけではないので、塗っているときはどういうシチュエーションのカットかも分かりませんでしたが、上映会でフィルムを見たときは「そこは俺が塗ったんやで〜」と言ってみたい衝動に駆られたのを覚えてます。兄の担当パートはハナコの落下が一段落して立ち上がるところと、ドラゴンと出会って一緒に歩きながら話をする部分で、ロボットとかマンモスはありませんでした。今でも印象的なのは、ドラゴンの「カドミウムグリーン」と、ハナコの髪の毛の「バーントアンバー」(確か)ですね。とにかくムラになりやすく、どうやって目立たないように塗るか苦労しました。結果として、まず塗る部分を一度水で塗らしてから、充分な量の絵具を溶かして一気に塗るという方法でやってました。上映会で観たときは、けっこう目立たなくできたじゃんと自分でも感心した記憶があります。ちなみに、ハナコの髪の毛の色は、次の年の「チャイニーズエンジェルズ」のサムソンの背広の色と同じだったような...

 全員参加を基本としているため、絵心のない者にも描けるよう配慮したキャラデザインになっています。そのため、絵的にはもの足りないと感じる人がいると思いますが、ラストの首の回転は「課題」の回転をやったことのある者にはすごく難しいものがということが分かってもらえるでしょう。
 それよりも、この作品の特長は人の内面心理の表現に真剣に取り組んだところにあると思います。昨今のパロディにもならないような作品が多い中では、このようなテーマを持った作品が出てくることを切望して止みません。
 余談ですが、当時のスタッフの間で一番人気が高かったのは、実はハナコのお母さんです。萩尾望都さんの絵柄に似ていると評判だったキャラデザのKさんによるもので、ほんの1、2カットしか出てきませんが、とにかく美人です。

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